[Diary/2008/November]

エロビデオ制作者とMySpaceユーザ / 2008-11-13 (木)

今日

ミーティング,論文.

「素人」の原動力

2ちゃんねら推薦の極上夜用動画を発掘する「YourFileHostViewer」 :教えて君.net
「素人」つまり個人レベルでの創作の原動力とはこういうものなのだな,と痛感.

何が痛感かというと,既存のものを最大限に利用し楽しもうとする原動力のすごさ.
ここで言う既存のものというのは,YourFileHostに存在する大量のエロビデオと2chという集合知によって分野ごとにスレッドにまとめられたデータベースである.
このように既存のものをネットワーク化し,そのネットワークの構築そのものを作品として仕上げていくということにおいては,その道に長くいる人間は絶対に「素人」には勝てない.
なぜなら玄人は,それ一つで満足できる最高のエロビデオを作ろうとしてしまうからだ.

ニコニコ動画で作品をアップしている人間とMySpaceに作品をアップしている人間のモチベーションは明確に違う.
MySpaceは既にメジャーデビューしていたり(機会があれば)メジャーからデビューしたがっている人達が割合としては非常に多い.
それに対してニコニコ動画は,あくまで趣味とする人間が多い.技術的には遜色がなくてもだ.
だからこそ,自分の作品が二次利用されることを当たり前だと思う人が多いのだろう.
(それに関しては「他人の作品も利用するのが当たり前」という意識の問題もあるのだけれど)

ニコニコ動画の人達は,上記のYourFileHostViewerを開発した人達,つまり視聴者側に近い.
そしてMySpaceの人達は,エロビデオの制作者側に近い.

ニコニコ動画の特徴は,一つのテーマで色々な動画が沢山存在することにある.
気に入ったVOCALOIDオリジナル曲があれば,公開されているカラオケを使い「歌ってみた」が作られたり,自分の楽器が入る余地を作り「演奏してみた」を作ったりする.
それらの動画は,タグやキーワードの検索,マイリスト,関連動画等の機能によってそれぞれリンクされている.
ユーザはその中から一つだけ聴くということはなく,同じ曲の色々なバージョンを聴いたりすることに喜びを感じる.
聴くのみならず,色々なバージョンの比較動画を作ったりする.
これは動画制作者側も同じで,自分の作品を他人の作品と連動させる,連動させられることに非常に喜びを感じるようだ.

例えば有名な「演奏してみた」の制作者が上げたVOCALOID曲を演奏した動画は,実はオケトラックとしては原曲の動画の音トラックを用いずに,その曲を「歌ってみた」動画の音トラックをベースにしている.
「演奏してみた」動画が再生数が上がると,それに準じて「歌ってみた」,次に原曲の再生数が上がっていく.
ユーザ側はその動画同士の比較動画などを作ったりするのだけれど,この比較動画を作ったり繋いだりするユーザが,上記のYoutFileHostViewerにあたるわけである.
曲を作ったり歌ったり演奏したりすることは出来ないけれど,出来ないからこそ繋ぐことを専門にするユーザというものが存在するのがニコニコ動画の特異なところなのである.

MySpaceでこういうことが起きているだろうか?
単純に他のユーザとのコラボレーションをする人がいるかという話ではない.
繋ぐことを専門としているユーザがいるか,それを歓迎する制作者が多いか,という話だ.
「いい曲が出来ましたよ」と自分のスペースに書く人はいるだろうけど,MySpaceの自分のスペースを使って別のユーザの作品同士を繋ぐことをメインにしているユーザはいない.
これが「プロ」や「プロを目指す」つまり自分で制作したコンテンツで商業活動をしたい人達が集合しているMySpaceという場所の特徴だと思う.

つまり「MySpaceはエロビデオ制作者,ニコニコ動画はエロビデオ鑑賞者」ということである.

では仕事としてオリジナルを作りつつ他人の作品も利用している安藤が出来ることってなんだろう?
MySpaceの人種とニコニコ動画の人種,両方の繋ぐシステムの構築じゃないだろうか?