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OSXで複数のAudioI/Fをまとめ多チャンネルXLR入力を実現 / 2008-06-25 (水)

ずいぶん前から知ってて実際に使っていたけれど,記事にはしていなかったので.

概要

Mac OS Xでは複数のオーディオインタフェースをまとめて,DAW側からは一つの仮想インタフェースとして見せることが可能である.従来は3チャンネルを越えるXLR入力を行おうとすると,マイクプリアンプを多く搭載するために高価である高性能オーディオインタフェースを用いる必要があった.この複数のインタフェースをまとめる機能を用いることで,2chのみXLR入力がある安価なオーディオインタフェースを複数組み合わせ,多チャンネルのマイク入力が行うことができるようになった.

セッティング方法

藤本健のDigital Audio Laboratory
第192回:Mac OS X “Tiger”のオーディオ機能を検証 ~ MIDIのLAN伝送に対応。CoreAudio/MIDIの未来は? ~

仮想インタフェースの構築

$ open /Applications/Utilities/Audio\ MIDI\ Setup.app

でAudio MIDI 設定を開く.
上のメニューの「オーディオ」→「機器セットエディタを開く」
機器セットのエリアで「+」ボタンを押すと新たな機器セットが出てくる.これが仮想インタフェースになる.名前を付けておく.
ここで下の「構成」エリアに現在接続されているオーディオインタフェース一覧が出るので,機器ごとの「使用」にチェックを入れていく.

クロックの設定

どれか一つの物理的オーディオインタフェースをクロックのマスターとする.「クロック」ラジオボタンにチェックを入れる.
他のオーディオインタフェースの「リサンプル」にチェックを入れる.

効果

個人ユーザが3チャンネルを越えるマイク入力を同時に行うのはコストの面で難しい. それは,ミキサを使用せずに単体でXLRでマイク4chが同時入力できるオーディオインタフェースは数少ないという理由による. さらにホール等での機材持ち込みレコーディングやライブのためにコンパクトかつバスパワーで動作可能,ある程度枯れた規格を使用という条件を付けると,MOTU TravelarM-Audio Fast Track Ultraしかない. Travelarはスタンドアロンミキサとしても同時に使える仕様であり非常に高性能だが価格が13万JPYほどであり個人で購入するにはコストの面で問題がある.Fast Track Ultraは5万JPYほどだが,それでもまだ個人ユーザには高い(音質的にも多少厳しい). それなりの性能のマイクプリアンプを搭載する必要があるため,マイクプリの価格がネックになっていて,2チャンネルがコンシューマ向けに売れる価格としては限界であるのだろう. さらに最近のオーディオインタフェースはアナログ2ch,デジタル2chという構成が多く,ライン入力4chすらできないものが多い.

この複数のオーディオインタフェースを一つの仮想インタフェースとしてまとめる方法を用いると,非常に安く4チャンネルの同時入力が可能となるため,個人ユーザが安価に多チャンネル同時入力を行うことが可能である.家に余っているインタフェースや,他の人から追加のオーディオインタフェースを借りるなどすれば,非常に安価に実現できる. ミキサを持っていく必要がないため,荷物も少なくなる.

問題点

この方法の問題点はオーディオインタフェース内蔵のミキサが使えなくなり,マイクで拾った音とコンピュータからの出力が同時にあるライブ等の用途では,外付けミキサを用いる必要があり,さらにPC内部とソフトウェアを経由した音のみしかミキシングmできなくなることにある. 例えば,安藤がライブ等でメインに使っているYAMAHA GO46はハードウェアミキサを搭載しているため,ライブ等でミキサがなくてもマイク入力の音とコンピュータの出力の音をミックスし出力することができる(ソフトウェアを通したモニタリングではないためレイテンシが最小限かつ音の劣化がない).

しかしこれでまとめてしまうと当然ハードウェアミキサの能力は当該のインタフェースから入力したチャンネルにしか効果が及ばないため,全体のミキシングができなくなる. これを解決するためには,全ての音をパラレルに出力し外付けミキサに入力し調整するという方法を用いるしかないのだが,ミキサに入ってくる音はPC内部を経由,更にはソフトウェア内部を経由してくる場合が多いので,レイテンシが非常に大きい(入出力でリサンプリングをかけるので劣化も大きい).

したがって,この方法を取る時はレコーディングのみにとどめ,ライブで使う場合は多チャンネルパラレルのグループ出力を持つ外付けミキサ+多チャンネルライン入力をもつオーディオインタフェースを使うしかない. そこまで行くとMOTU Travelerを勝った方がいいのだが.