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低ギア比への誘惑 - 課金地獄 - Sugino OXシリーズとDixna ラ・クランクのコンパクトプラスの導入

「34/28Tなんて,どこの剛脚さんの乗り物ですか?」

リア32Tを組んでいたパナチタンロード,ちまちまと中古で揃えていた9000Duraに組み替えるためにバラしていた.
予定では,エントリーしていた人生初ブルベのAJたまがわ2014BRM406定峰200に間に合うように組むはずだったが,仕事が忙しくて組むのが間に合わず,通学車のRNC7で参加することとなった.

この少し前に,RNC7は「ホリゾンタルクロモリしかもRNC7のスレンダーな曲線を活かすならシルバーアテナしかないっしょ」という発想により,11sシルバーアテナの(ウルトラトルク)フロント50/34Tリア11-28T(CS-6800)に換装されていた.
「リア28Tでも「初心者向け」と称された定峰200なら大丈夫だろう?」と思いその状態で出走したら,登りで足をつくこと数回……「34/28Tなんて,どこの剛脚さんの乗り物ですか?」という泣き言が入ったのであった.

認定完走はしたものの,体に3日近くダメージが残ることになり,やっぱりリア28Tではしんどい,という結論に至る.

しかし休日用メインバイクであるパナチタンに組もうとしている9000DuraのRDはショートケージしか用意されておらず,リア最大28T.
そんな状態で,これからブルベを走るのは正直厳しい…….

事ここに至って,価格の高さという障壁により今まで手を出してなかったフロントチェーンリング小径化に取り組まざるを得ない状況になったのであった.

ワイドギア比をフロントチェーンリング小径化で解決する

前回の記事「6700に30Tと5700に32Tが出た!」の最後に書いた,リア32T化の問題「ワイドゆえにアウター入れっぱなしになり,それが疲労を生む」をどう解決するか,というのが問題である.

ギア比の幅はフロントチェーンリングに影響を受ける

そのスプロケセットのギア比の幅,つまりクロスかワイドかは,フロントチェーンリングの歯数に影響を受ける.
フロントチェーンリングが大きければ大きいほど同じ歯数構成のスプロケットでもワイドになり,逆にフロントチェーンリングが小さければ小さいほど同じ歯数構成のスプロケットでもクロスになる.

スプロケット葉数構成 50Txトップのギア比 50Txローのギア比 50Tでのトップとローのギア比の差 34Txトップのギア比 34Txローのギア比 34Tでのトップとローのギア比の差
11-28T 4.55 1.79 2.76 3.09 1.21 1.88
11-32T 4.55 1.56 2.99 3.09 1.06 2.03

ごくごく簡単な計算だが,この表を見て貰えば分かる通り,トップとローのギア比の幅はフロントチェーンリングが小さいほど狭くなる.つまりクロスになって使いやすくなる.

50/11Tなんて踏めない

また,本当にアウター50T必要なの?という問題もある.
コンパクトクランクのアウター50Txスプロケトップ11Tなんて,自分には踏む機会があるのか? そもそも踏めるのか? ということだ.

キャットアイ基準の700x23Cのタイヤ周長2096mmで考えると,50Tx11Tでケイデンス90だと速度は51.5km/hとなる. 普通の人がこんな速度領域で踏めるのか?という話だ.
どうせ40km/hぐらいまでしか踏まないならば,フロントチェーンリングはもうちょっと小さくてもいけるはずである.

つまりフロントチェーンリングの小径化は「上の速度は切捨て,ギア比を低い方に振って,かつクロスレシオにする」ということである.
ジュニアスプロケは上を捨ててギア比のクロス化は達成できるが,最小ギア比は小さくならない.
つまりフロントチェーンリング小径化はギア比クロス化と低ギア比化の両方が行えるわけで,非常に理にかなっているといえる.

PCD74ダブル「コンパクトプラス」という規格

チェーンリング小径化で手っ取り早いのは,フロントトリプル化してPCD74のインナーを使うことなのであるが,重量というよりもQファクターという観点から日本人には受け入れ辛い. またトリプルにしてしまうと,最大32Tが使えなくなる,という本末転倒な事態にも落ちいる.

ところがダブル用のPCD110での最小歯数は34Tであり,これ以上小さくすることは物理的にできない.
これがコンパクトクランクのインナー34Tの根拠である.

そこで,PCD74とPCD110の両方の取り付け位置を持っているトリプルクランクのアウターを取っ払ってQファクターを縮めたような形の,PCD110とPCD74の取り付け位置を両方持つロード用5アームクランクが登場することになる.

このロード用5アームダブル用PCD74という規格に対応しているのは,現在ではSugino OXシリーズと,Dixnaのラ・クランクシリーズの二つのみである.

Sugino OXシリーズ

Sugino OXシリーズ.
ロード用5アームPCD74mmを実現した「Compact Plus+」という規格名でSuginoは呼称している.
最初から11sに対応したOX901D,最初に出た10s用のOX801D(0.5mmスペーサ追加により11s対応),完成車向けで一般販売がない9~10s用のOX601Dの三種が存在している.

JIS用セラミックBBとチェーンリングがセットで販売されている.
OX901DにはハイグレードなCPシリーズ,OX801DにはPEシリーズのチェーンリングが付属する.
フル日本製ということもありかなり高価で,OX901Dは,一番安いネットショップで26,000円弱であった.

セットの歯数構成は色々選べるが,目的は低ギア比化なので,30/44Tか,30/46Tを選ぶことになる.

Dixna La Crank

東京サンエスのブランドDixnaが出している,ダブルPCD74用のクランク.
カンパニョーロ5アームと同じくクランクアームがチェーンリングアーム一つを兼ねる構造になっている.
クランク単体で13,000円弱と,Suginoに比べて圧倒的に安いのが特徴.

セットのチェーンリングは35T/49Tと全く低ギア比化しないため,チェーンリングセットではなく,クランク単体とチェーンリングを別に買うことになる.

クランク本体は変わらず,チェーンリングの違いで9〜10s用と10〜11s用の二種類が存在する.

比較

ラ・クランクは安いものの,カンパタイプのアーム一本分をクランクアームが担当するのは,実は既存チェーンリングの使い回し勝手がよろしくない(説明書によると位相的に,チェーン脱落防止ピンがクランクアームと反対側に位置するように取り付ける必要があり,加工が必要もしくは無加工だと見た目が悪い,という問題がある) .あとぶっちゃけ黒バージョンの見た目がよろしくない.

なので個人的には多少高くてもSugino OXをオススメしておく.

ちなみに,これらの小径チェーンリングは,FDが直付けのフレームの人は,基本的には無理です.残念でございました.
(自分はFDバンド式,汎用シートポスト,汎用シートクランプ,スレッド式BBにこだわる人)

OX901Dの導入

9000Duraに合わせるので最初から11s対応……性能的にも801より901の方が上……ということで,30/44TのOX901Dの導入を決定した.

これは次回の記事で詳しく書くが,9000世代のFDは羽が79世代までよりも短く,小径チェーンリングでも問題ない位置にセッティングすることができる.

ちっちゃい……チェーンリングがちっちゃいよ……この見た目のバランスに慣れるのにしばらく要した.
構成は以下のとおり.

  • クランク: Sugino OX901D
  • フロントチェーンリング: Sugino CP110S 44T + CP74S 30T
  • フロントメカ: FD-9000
  • リアスプロケット: CS-6800 11-28T
  • リアメカ: RD-9000-SS

実験結果と考察

AACRのコースならこれで十分

上記の構成で,2014AACR160kmを走ってみた.
実際には前日に乗鞍を登っているのでそれも込みで考えても, 「AACR程度ならフロント30/44Tリア11-28Tで十分」だと感じた.

前日の乗鞍の長野側登りも全く負担なく登ることができた.

フロントアウター44Tリアトップ11Tのケイデンス90rpmの速度は,45.27km/h.
平坦では全く問題がない速度域であるし,実際十分であった.

問題は下りであるが,まぁ60km/hぐらい(制限50km/hで緊急回避の余裕を見た状態)までは自分は脚が回ることがわかった.
公道イベントである以上当然制限速度に従う必要があるわけで,公道であればどれだけいい道でも60km/h以上は出すことができないため,やはり十分であると言えるんじゃないだろうか.

そして何より44Tはアウター入れっぱなしでも11-28Tがかなりいい感じでクロスしてくれるため(フロント50Tの11-25よりもクロスしている計算になる),ペースコントロールが非常に楽になり,全く負担なく160kmを寄り道しながら制限時間内で走れて,しかも体に全くダメージがないという状態であった.

ちなみにロー側ギア比としてはフロント34Tリア32Tよりも0.01だけ高い計算になるが,ほぼ同じと見ていいだろう.それでクロスしているのだから最高である.

これはいける!」はずだったのだが,その構成で和田峠を上って泣きが入ることになったのだった…… (続く)