和田峠で泣きが入る
前回の記事「Sugino OXシリーズとDixna ラ・クランクのコンパクトプラスの導入」の通り,フロント30/44Tリア11-28Tは,AACR2014のコースでは全く問題がなかった.
気を良くして和田峠(東京ではおそらく長さと斜度のバランスが一番きつい坂)に突入してみたところ泣きが入った.
足を何度もついてしまったのである.
これはいかんことですなぁ……と半分喜びみたいな表情で(沼にどっぷり使っている証拠である),フロントをさらに小さくする方向を検討しはじめた.
シマニョーロで低ギア比
2009~2014のエルゴパワーが好きである.
自分は手が小さいということもあり,長距離での信頼性や疲労の蓄積にシマノのSTIに劣るものの,「手が小さくてブレーキがうまくかけられない」という女性は是非試してほしい.
で,このカンパのエルゴパワーはGLOWTACという日本の小さなメーカから出ている「イコールプーリー」を使うことでシマノのロード用~10s,MTB用~9sのRDが使えるという,素晴らしい特性がある.
シマノは10sDynasys世代で一応リア最大11-40T対応するキャパシティとスラント角を(公式ではないもののサードパーティ製が大量に出ている)使えるが,残念ながらDynasysはロード用シフタとはワイヤ引き量がことなり,混在はできない(おそらくレバーが短いラピッドファイアの操作の軽さを優先したと思われる).
しかしそれでもイコールプーリーはロード用10s,MTB用9sまでは使えることを可能にするので,公式発表的にはシマノRD-M595-SGSの11-36Tが最大となる.
これはカンパRDの12-29Tに比べ格段に低ギア比を実現可能であり,必然的に11sではシマニョーロ有利となる.
ちなみにイコールプーリー赤は11sのエルゴパワー+シマノ10s用(MTB9s用)RDを10sとして使うもの,イコールプーリー金は11sエルゴパワー+シマノ10s用(MTB9s用)RDを11sとして使うものである.
イコールプーリー赤を使った10sの方は散々ぱら検証されているが,イコールプーリー金を使った11sの方は検証事例がない.
が,現在のところ,11s用ワイドスプロケは11-32Tしかないので,まず実験としてリア32Tを使えるかどうか試してみることとした.
(M9000系XTRで11-40Tが出ているので,お金があればそちらも要検証である)
Sugino OXシリーズのセットチェーンリングよりもさらに小径化
前回の記事「Sugino OXシリーズとDixna ラ・クランクのコンパクトプラスの導入」から登場しているOX801DとOX901D,初期状態で選べるチェーンリングセットは30/44Tが一番小さいのだが,当然これでは足りるはずがないのである.そこでOX901Dの場合でも801グレードのPE110S(アウター用)とPE74S(インナー用)を別途購入する必要がある.
これで,フロント24/40Tが実現できるので,リア11-32Tと合わせて,今のところ11sで実現できる最低ギア比を検証してみる.
実験機の組み上げ
というわけで,
- フロントクランク,チェーンリング: Sugino OX901D+PE110S40T+PE74S24T
- リアRD: Shimano RD-5701-GS (ロード10s用,公式で11-32Tに対応)
- シフタ(Athenaウルトラシフト+イコールプーリー金)
の構成で組んでみた.
フレームはBianchi Via Nirone 7 2014とした.ただしフォークは通常のものとは違いフルアルミ製のものを使っている.
FDの選択
当初はイコールプーリー金の説明書通りシマノ10s用FDであるFD-5700を使っていたのだが,24/40Tという極小チェーンリングには羽が長すぎてチェーンステイと干渉した.干渉しないようにチェーンリングとの隙間をあけると,フロント変速性能の悪化が著しい.ので11s用FDであるFD-6800を採用したところ,羽が短いおかげで干渉しなく,ちゃんと歯から1〜2mmの範囲内にセッティングすることができ,変速性能も非常に向上するという結果が得られた.
11s環境ならば9000,6800, 5800をお勧めする.
余談ではあるが,ウルトラシフトエルゴパワーに9000系のアームが長いFDを使うと,調整次第でアウター側にもトリムが使えるようになる.
極小チェーンリングのせいで,フロントインナーでリア型トップ1,2枚が使えない(本来使っちゃいけないが)ので,平地はアウターしか使わなくなるのだが,その点アウター状態における可動域が広い(音鳴りが少ない)このアウター側トリムはかなり有効であると感じた.
斜め後ろから見ると,遠近感も手伝ってそれほど変には見えないが……
真横から見ると,異様なまでのチェーンリングの小ささとスプロケットの大きさのアンバランスが見て取れる.
実験結果と考察
和田峠はゆるポタになったか?
「足をつくことがなくなり楽に登れるものの,『ゆるポタ』とは言い難い」が結論.
これ以上となるとさすがにアウター側のトップスピードが40km/hを切ってしまうので,これが限界だろう.
(フロント40Tリア11Tのケイデンス90の速度は41.2km/hである)
これ以上はトレーニングでカバーせよ,ということか.
まさに「アホの極致」とも言えるこのセッティング.
とは言え,あの和田峠を楽に登れるのだから,初心者や女性には是非お勧めしたいセッティングである.
全てがロード用パーツであり,改造することもなくポン付けでここまで出来るのだから,お金こそかかるが(そこが一番問題だ),簡単にできるのである.
問題点
シマノ~10sRDの可動式ガイドプーリー
イコールプーリー金の説明書にも書いてあることであるが,11sになると動きの幅が小さいためか,シマノ特許の可動式ガイドプーリーがかえって邪魔をして,シフトの正確さを損なってしまう.
9000世代のガイドプーリー(これはテンションプーリーと同じものとなる)に交換する必要がある.