[Work/TechInfo/other]

LRTを利用した街作り / 2004-08-08 (日)

ヨーテボリの路面電車システム

現状

ヨーテボリ(イェテボリ,Göteborg,Gothenburg)は,異様なまでにトラム(路面電車)網が発達している街である.
トラムが運用されているのは,スウェーデンではヨーテボリのみ.ストックホルムにもトラムはあるが,夏季観光シーズンのみの運用という観光用途である.

それにしても,ヨーテボリの人口は40万人.たったそれだけなのに,トラムの路線が13(正確には14だが,12番はLiseberg遊園地専用…のはず)に.本数は日中でさえ時間あたり4本という,驚くべき発達っぷりである.
運営会社であるベストトラフィックは充分に収益をあげている.
つまり,「路線と運行本数が多ければ多い程,便利になり,その結果利用率が上がる」という基本的な考え方である.
ここらへんは短期的な収支が最重要視されてしまう日本の自治体の街作りでは難しい所だ.

トラム網の発達

ヨーテボリはその街計画の最初からトラム運用を前提として街作りが進められて来たため,トラムの路線の殆どは専用軌道であり,交差点や,本当に建設当初の住宅地を走る道路のみが併用軌道であり,全線複線となっている.
専用軌道が脇に走っている道路では,大抵その他に2車線の車用道路がある.
また専用軌道とはいえ,都心部においては石畳敷やアスファルト舗装になっている部分が殆どであり,バスもトラムの軌道を走ることが可能である.つまり半分併用軌道のようになっている.
そのため,バス運用においても定時性を確保することが可能であり,トラム路線の合間を縫うようにバス網が形成されている.

料金

ちなみに,利用料金は基本的にプリペイドカードを使うシステムになっており,市内ならば13.3SEK(180JPY弱?)で一時間半乗り放題となっている.これはそのままバスやフェリーに持ちこす事が可能.
一ヶ月パスというのもあり,これが500SEK(7500JPY強).日本の定期などに比べれば多少高いが,一ヶ月間,国鉄や特別な急行バスを除く,ヨータランド全ての公共交通が乗り放題であることを考えれば,決して高いとはいえない金額である.
このプリペイドカードは,街中のキオスクならばどこでも扱っている.
(フェリー以外はワンマン運行であり,このプリペイドカードを車内の機械につっこんで料金を支払う.たまに料金支払いをチェックする人が乗り込んで来るので,ただ乗りは基本的にできない)

車両について

車両に関しては,主要路線に投入されている新しめの車両では,3両編成のうちの真ん中の車両をノンステップ車となっており,バリアフリーが考慮されている.
軌道間隔は標準軌であり,電圧を考えなければ,トラムの車両も国鉄路線を走ることが可能である(甲種輸送は多分そのように行われたはず).
また,最小Rもやたら小さく,おまけにヨータ運河にかかっている橋を越えるために,限界勾配も高い.
これらの条件を考慮に入れれば,ヨーテボリのトラムはLRVの領域に半分足を突っ込んでいると言えるだろう.
さすがに制御系はVVVFというわけではないだろうが.
(古い世代の車両は多分抵抗式,そこそこ新しいのはチョッパ?ブレーキに関しては…回生ブレーキか?音に詳しくないのでわからない)

投入されている編成は,主要路線に3両で1編成を組む新型(真ん中の車両がノンステップ),その他の路線では,単行が可能な旧型車両を,単行か2両編成で運用している.
また,夏季の観光シーズンには,Lisebergという遊園地へ向かう12番線で,えらい旧型のレトロ車両が運行されている.

日本の地方都市でLRTを導入する際の問題

日本の地方都市におけるLRT導入事例の問題は,都市がだだっぴろいという事にあるだろう.
そのため,ごく一部に路線を敷設し運用するだけでは,利用客が少なく採算が取れないということになる.

ヨーロッパの地方都市は,概ね人口に対して都市の面積が小さいものが多い.
ヨーロッパでは,都市部の殆どの住宅は集合住宅である.これは住宅が石作りであったということと地盤のために,集合住宅化が容易であったため,古い都市でも一番最初の街作りの段階から集合住宅をメインに据えることが出来たためであると思われる.

半面,日本の場合,木造住宅という制限があったため,集合住宅を嫌うという文化が歴史的に形成されて来た.そのため街は放射状にどんどん郊外へひろがっていくことになる.
その結果が中央線,京王線,小田急線,西武線の車窓から眺める,「どこまでも住宅が続く街並み」である.
だだっぴろい居住エリアをカバーしようとすると,路線や運行本数が嵩まざるを得なくなる.

ここ20年ほど,日本でもLRTを利用した街作りが叫ばれるようになってきたが,その際に検討される導入事例は専らドイツとフランスの各都市であり,何故かヨーテボリが取り上げられることはない.
ヨーテボリの交通システムは歴史的にも古く完成されているのに,なんで取り上げないか?
ちょっと悔しかったので休日を利用して書いてみた.
暇になったら,ここらへんちょっと整理して,きちんとした文章にするかも.
つっても,都市計画云々の知識は殆んどないんだけどね.

鶴岡も「NPOなどの民間主体による,歩いて暮らせる街作り」なる早稲田建築系のプロジェクトのモデル都市になっているらしいが,その検討の中でLRTに関しては一切取り上げられてない.
あのせせこましい旧市街地と旧7号線に専用,もしくは併用軌道を付設するとなるとえらい大変なので,当り前と言えば当り前だが.
(いっそのこと,駅前…山王→銀座…市役所の逆L字エリアを貫く道路は自家用車乗り入れ禁止にしてしまえばどうか?今だって銀座と川端は一通だし.もちろんバイパスは必要)

あと,路面電車が雪に弱いと判断するのは早計で,実際函館と札幌にも走っているし,ヨーテボリのようにそれほど雪の量はないが架線が凍結するぐらい寒い都市でも走っていることを考えると,地吹雪の中でも運用可能なのではないだろうか.もちろん車両と架線に工夫は必要だろうが.

まぁ鶴岡は,酒田と人口や施設の誘致を取り合ってるという状況があるため,なかなかうまくはいかないのだが,そこらへんはそのうち.
僕は実は庄内市構想には大賛成だと言っておこう.庄内交通だけじゃ無理だって.

7号線沿いに三川を通り酒田駅に到達する専用軌道とか,そこから空港へ延びる支線とか,もしくは昔の庄内交通湯野浜線をもう一度,とか色々あるけど.

あー,それと最近の日本の新型LRV,2両編成を基本として,1編成が1~2億JPYらしい.
ヨーテボリを走ってるトラム車両は,もっと安いだろうなぁ.